日記とは言い切れない更新速度です。
2014
行ってきました。
昨日、東大で行われていた講演会です。
■世界結晶年(IYCr2014)記念講演会
「結晶の美しい世界と、私たちの未来」
そもそもですね、今年が世界結晶年に指定されていたということを露知らず……(世界結晶年ってなんだ? 世界が結晶化する年か? とか思うほど手遅れ)
「世界結晶年を締めくくる総括ともいえる講演会」だったそうですが、つまり、知ったときにはすでに締めくくりに入っていたという……いろいろ手遅れ感でしたが、講演自体はすごく面白かったです。
ただし、寒かった!!
見たところ、聴講者の9割は男性だったので、皆さんそれほど寒がっている様子はなかったんですが、床の冷たさが靴裏から登って来て、だんだん身体の下から壊死していくような寒さでした。ひざ掛けも持ってきていたんですがとても足りず。あまりの寒さにお腹と頭が痛くなってきたので、第二部を聞き終わった時点で会場脱出してしまいました。つまり半分も聞けなかった……もの凄く無念です。
講演を聞き終わってから、あちこちに納品に行こうと思っていて、納品物を持って歩いていたんですが、家に帰り着くのがやっとの状態でした。帰ってすぐに布団に倒れ込んだので、まだ風邪はひいていない……と思う。たぶん。ちょっと鼻で息できてないですがたぶん。
あと、苦情を言うとしたら、司会(三人もいた)が非常に邪魔でした。司会が話す時間はプログラムには含まれていないんですが、彼女たちがしゃべりまくったお蔭で時間が削られ、講演者たちが「時間がないので内容をはしょります」という……本末転倒すぎる。来賓挨拶とか、司会の自分語りとかより、講演の内容のほうがずっと大事だろうと言いたい。進行役という本来の役目を忘れないで頂きたい。
そんなこんなでしたが、とりあえず、
・ラウエ斑点萌え
・寺田寅彦が偉大すぎる
・中谷宇吉郎素敵すぎる
・結晶構造を見れば(電子顕微鏡とかX線とかで)なんでも分かるよ!
・世界は(ほぼ)結晶でできている
・皆で結晶構造をどんどん解き明かそうではないか
という感じでしょうか。ちょっとおぼろな感じの頭で思い返すに。
ラウエ斑点写真集があったら欲しいです。誰か作ってくれませんかね。しかし、そのためにどれだけの量のX線を浴びなければならないかを推測すると、作って下さいとも迂闊に言えないこの心境。
そして、我が家では、俄かに祖父の思い出語りが盛り上がっております。私の母方の祖父は、寺田寅彦の門下生の一人(専攻は地球物理学)です。中谷宇吉郎よりは十歳以上年下なので、それほど直接に教えを受けてはいないと思うのですが(あやふや)
しかし、寺田寅彦や中谷宇吉郎の名前や思い出語りを拝聴するに、祖父のことがしきりに思い出されるという謎の懐古的講演会。
中谷宇吉郎の娘さんが三人講演なさっていて(実際に檀上に立ったのは二人だけですが……三人目のお話も聞きたかった、司会さえ時間配分をちゃんとしてくれていれば……)、これが身に沁みて面白かったです。
中谷宇吉郎氏は雪の結晶の研究で世界的に知られていますが、長女は岩石学の専門家となり、次女は霧の彫刻家、三女はピアニスト。全員、自然と芸術という分野を引き継いでいるわけで、自分の身に換えて考えるに、祖父から私が引き継いだものを改めて考えさせられました。
長女の中谷オルセン咲子さんは、岩石(鉱物)の専門家なので、思いっきり私の興味分野ですが、残念ながら、昨日は自分の研究の話より、中谷宇吉郎氏の話をメインにされていて、あまりそっちの話は聞けませんでした。ずっと海外で活躍されているので、著作もおそらく全部英文と思われますが、機会があったら読んでみたいです。
次女の中谷芙二子さんの話は、とにかく面白かった! 「学閥や権威が嫌いな中谷氏の反骨精神を引き継いだ」「彫刻が固形物という概念をひっくり返したい」「人間の手が加わったものではなく、風や大気によって作り出され、自然の力で変化するものの美しさ」(だから素材が「霧」)という前置き(私的解釈)のもと、作品の数々をスライドで解説されていましたが、どれもこれもすごく面白くてですね……詳しい話をもっと聞きたかった。私も権威嫌いで、自然が作りだしたものの完成度の高さに比べ、人間の手が加わったもののなんと稚拙で醜悪な……と思っているんですが、なんかこう……そういう血の引き継がれ方なんでしょうかね。
あちらは大物揃いで、私はひよひよもいいところですが、寄って立つ土台(血)や、その継承の仕方に勝手に共感しまくったわけで。私もあと四十年ぐらい経てば、あの人たちの濃さの一端ぐらい出てくるかなと……そこに行き着くまでの方針は何一つ立ってませんが。
母を連れて行ったんですが、研究分野的には、私より母のほうがずっと楽しんだ様子です。私は文系ですが、母はばりばり祖父の血を継いで物理学をやっていたので。というか、我が家は、父も兄も物理学の専門家なので、私だけが異端児です(親戚にも物理学の専門家が多くて、基本理系一族)。……と思っていたんですが、今日の講演を聞くに、どうやらそれほど異端というわけでもなかったんだな! いちおう、私にも祖父から引き継がれたものがあるんだな、と胸熱。だったからこそ、会場の寒さを呪いたい。全力で。
眼力が鋭すぎて、周囲を委縮させる傾向があったという祖父が、幼い頃の私を気に入っていて(猫可愛がりするような人ではなかったので、普通のおじいちゃんと孫のような交流はなかったんですが、私も祖父をとても「気に入って」いました。お互い気に入っていた)、「この子は将来、大物になる」「日本ではなく海外で活躍するだろう」と言っていたそうで、何一つ期待に応えられてないな……というのが、私がずっと抱いてきた悲しみの一つだったのですが、まあ、人生まだ五十年? 六十年ぐらいありますし頑張ろう、と思いました。何この自分語り(つっこみ)
X線とかあまり浴びたくないので(親戚に大量に浴びてる研究者がいるからこそのこの忌避感)、結晶学に身投げ!ということは絶対にしないと思いますが、これからも機会があればちょくちょく首を突っ込んでみたいと思っています。
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