日記とは言い切れない更新速度です。
2013
携帯の写真フォルダが、ケーキの写真ばかりで、ぎっちりと埋まってきました……
毎日ケーキの話ばかり書いていてもいいのですが、さすがに糖度高すぎて胸焼けしてきたというか、スイーツ☆ブログ的な何かになるのも不本意なので、あえて今日は変化球の話を書こうかと思います。
アイルランドはアラン諸島にある、Black Fort(黒い砦)と呼ばれる崖の話です。
これなんですが↓

この崖上に立った日は、酷い嵐で、冷たい雨も降っていました。
気分はもう「大海の磯もとどろに寄する波……」……というか、なんだかSF映画の荒涼とした異世界に来てしまったみたいでした。
雨に濡れて黒光りする岩の合間に、貼りつくような奇妙な小さい黄色い花が咲いていて、なんだかシュールレアリズムの絵画のような。
学生時代の一人旅だったんですが、嵐に揉まれる小さなフェリーに乗っている最中、アイルランド訛りの英語を聞き取り損ね、イニシュモア島で降りるはずが、イニシュマーン島で降りてしまったんです。
というわけで、私の知っているBlack Fortはイニシュマーン島にあるんですが、今更検索してみると、イニシュモア島にある崖のことをそう呼ぶらしいですね。
しかし、雨の中、たった一人であるかなきかの細い道をやみくもに辿っていたとき、小さな看板に「Black Fort→」と書いてあった記憶があるんですが。
実際、辿り着いた崖は、本当に黒々としていましたし。
イニシュマーン島というのは、アイルランド諸島のなかでも一番人口が少なく、荒涼とした原風景を保っているといわれる島です。
アイルランドの国民的劇作家のシングが愛した場所でもあり、私が立ったのと同じ崖に、シングもよく立っていたようです。
まあ、そのあたりは後付け知識でして(何しろ、この島に降りてしまったのも偶然だったので)、そのときは帰りのフェリーがこの島に来るのかどうかすら知らず、他に歩いている人間も見当たらず、本気で途方にくれていました。
傘も持っていなかったのでずぶ濡れで、小さな看板を頼りに、先に何があるのかも分からない道を歩いて、とにかく歩き続けて、真っ黒い断崖絶壁に辿り着き、その先の水平線に何も見えないのを見たとき(普通は別の島が見えるはずなんですが、そのときは天候が悪すぎて本当に何も見えなかった)、
世界の果てに来た……!
と思いました。
ハチクロで竹本君が辿り着いたあれです。
ハチクロのあのシーンを読んだとき、本当に彼の気持ちが分かるなと思ったんですが……あれは随分、きらきらな世界の果てらしいですね。
宮本輝の「ここに地終わり 海始まる」という本も、同じような感情について描いていて、私はこれも気持ちがすごく分かるので書棚に置いてあるんですが、これは私が見たのに近い、暴風雨のような世界の果てです。ただし、この本で描かれているのはポルトガルのロカ岬で、こっちのほうがもっと世界の果てに近い位置にあるんですが(ユーラシア大陸最西端)、実際にはのどかな観光地のイメージがあるので、私としてはあまり現実には食指が湧きません。私が見たように、全然意図しない場所で、その時、その状況だけに(あえて言えば私一人に見合った大きさで)現れる世界の果てであってくれたほうがいい。
こんな嵐の日でなければ、きっと全然雰囲気が違ったんでしょうね。アイルランドにはいろんな崖があって、どれも観光名所ですが、この崖は比較的小さくて本当にマイナーです(そもそもイニシュマーン島に降りるのが酔狂)
ただ、この崖上に立ったとき、単純にもの凄い幸福感に襲われたんです。
有限な世界の中で、すべてが生かされていて、自分もただ生きていて、それでいいんだ……!と思いました。
アイルランドの巡礼たちは、崖を聖所として巡り歩いたというんですが、それも経験してみれば分かる気がします。
それ以来、私の中で、この崖は特別な場所なんですが(ちなみに帰りのフェリーは無事にやってきて、なんとかその日のうちにアイルランド本島に帰れました)、次に行ってみたら、晴れ渡っていてどうということもない波打ち際の崖かもしれないですね。
それでも、このとき撮った写真を後生大事にしていまして、たまにそれでハガキに印刷したりしていました。
何も注意書きなしで、なんだか伝わってくれる人がいればいいなという甘えた考えで、箱の隅っこに置いたりしていたんですが、買ってくださった方がいて嬉しかったです(笑)
90歳ぐらいになったら、また世界の果てを見に行くのもいいですね。
毎日ケーキの話ばかり書いていてもいいのですが、さすがに糖度高すぎて胸焼けしてきたというか、スイーツ☆ブログ的な何かになるのも不本意なので、あえて今日は変化球の話を書こうかと思います。
アイルランドはアラン諸島にある、Black Fort(黒い砦)と呼ばれる崖の話です。
これなんですが↓
この崖上に立った日は、酷い嵐で、冷たい雨も降っていました。
気分はもう「大海の磯もとどろに寄する波……」……というか、なんだかSF映画の荒涼とした異世界に来てしまったみたいでした。
雨に濡れて黒光りする岩の合間に、貼りつくような奇妙な小さい黄色い花が咲いていて、なんだかシュールレアリズムの絵画のような。
学生時代の一人旅だったんですが、嵐に揉まれる小さなフェリーに乗っている最中、アイルランド訛りの英語を聞き取り損ね、イニシュモア島で降りるはずが、イニシュマーン島で降りてしまったんです。
というわけで、私の知っているBlack Fortはイニシュマーン島にあるんですが、今更検索してみると、イニシュモア島にある崖のことをそう呼ぶらしいですね。
しかし、雨の中、たった一人であるかなきかの細い道をやみくもに辿っていたとき、小さな看板に「Black Fort→」と書いてあった記憶があるんですが。
実際、辿り着いた崖は、本当に黒々としていましたし。
イニシュマーン島というのは、アイルランド諸島のなかでも一番人口が少なく、荒涼とした原風景を保っているといわれる島です。
アイルランドの国民的劇作家のシングが愛した場所でもあり、私が立ったのと同じ崖に、シングもよく立っていたようです。
まあ、そのあたりは後付け知識でして(何しろ、この島に降りてしまったのも偶然だったので)、そのときは帰りのフェリーがこの島に来るのかどうかすら知らず、他に歩いている人間も見当たらず、本気で途方にくれていました。
傘も持っていなかったのでずぶ濡れで、小さな看板を頼りに、先に何があるのかも分からない道を歩いて、とにかく歩き続けて、真っ黒い断崖絶壁に辿り着き、その先の水平線に何も見えないのを見たとき(普通は別の島が見えるはずなんですが、そのときは天候が悪すぎて本当に何も見えなかった)、
世界の果てに来た……!
と思いました。
ハチクロで竹本君が辿り着いたあれです。
ハチクロのあのシーンを読んだとき、本当に彼の気持ちが分かるなと思ったんですが……あれは随分、きらきらな世界の果てらしいですね。
宮本輝の「ここに地終わり 海始まる」という本も、同じような感情について描いていて、私はこれも気持ちがすごく分かるので書棚に置いてあるんですが、これは私が見たのに近い、暴風雨のような世界の果てです。ただし、この本で描かれているのはポルトガルのロカ岬で、こっちのほうがもっと世界の果てに近い位置にあるんですが(ユーラシア大陸最西端)、実際にはのどかな観光地のイメージがあるので、私としてはあまり現実には食指が湧きません。私が見たように、全然意図しない場所で、その時、その状況だけに(あえて言えば私一人に見合った大きさで)現れる世界の果てであってくれたほうがいい。
こんな嵐の日でなければ、きっと全然雰囲気が違ったんでしょうね。アイルランドにはいろんな崖があって、どれも観光名所ですが、この崖は比較的小さくて本当にマイナーです(そもそもイニシュマーン島に降りるのが酔狂)
ただ、この崖上に立ったとき、単純にもの凄い幸福感に襲われたんです。
有限な世界の中で、すべてが生かされていて、自分もただ生きていて、それでいいんだ……!と思いました。
アイルランドの巡礼たちは、崖を聖所として巡り歩いたというんですが、それも経験してみれば分かる気がします。
それ以来、私の中で、この崖は特別な場所なんですが(ちなみに帰りのフェリーは無事にやってきて、なんとかその日のうちにアイルランド本島に帰れました)、次に行ってみたら、晴れ渡っていてどうということもない波打ち際の崖かもしれないですね。
それでも、このとき撮った写真を後生大事にしていまして、たまにそれでハガキに印刷したりしていました。
何も注意書きなしで、なんだか伝わってくれる人がいればいいなという甘えた考えで、箱の隅っこに置いたりしていたんですが、買ってくださった方がいて嬉しかったです(笑)
90歳ぐらいになったら、また世界の果てを見に行くのもいいですね。
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