日記とは言い切れない更新速度です。
2013
最近読んだ本、その2。
有名な大御所から、マイナーな傑作まで、時間にまつわるSFの短編を集めたものです。ええと、面白かったんですよ。同じく、時間SF選である「時の娘」より、全体的に読後感は良かったです。総じて水準が高かった、ような気がする。
しかし、それが錯覚かと思うほど、すごい爆弾が一つ仕込まれていたので、いろんなものが吹っ飛びました。
どういうことだ……
以下、感想。
一部、めちゃくちゃにこき下ろしている部分がありますのでご注意ください。
「時を生きる種族」ファンタスティック時間SF傑作選 ヤング、ライバー他 創元SF文庫
とりあえずですね、今、ロバート・F・ヤングの人気が急上昇中なわけですよ。
「ビブリア古書堂の事件手帖」のおかげで(私は未読なので分かりませんが)、長らく入手困難だったヤングの「たんぽぽ娘」もめでたく復刊されまして。
そのタイミングで、発刊されたこの選集。
これはつまり、あれですね、勢いに乗ってしまおうというわけですね。
ヤングの未収録作を発掘してきて、巻頭に飾り、さらに著者名にも「ヤング、ライバー他」と。今が旬ですもんね! めざとい! やるな!
おかげで、いろいろ面白いSFが読めるなら、大歓迎です。
ちょっとわくわくするじゃないですか……
と思いながら、ページを開いて、早速、ヤングの短編から読み始めます……
五分後の私の顔→ (;゚ Д゚)
……。
十分後、読んでいられず放り出しましたが、ぐっと堪えてまた続きを読み、放り出す、の繰り返し。
三回放り出して、ようやく最後まで読み切りましたが、この短編のなんと長く思えたことよ……
五十か所……いや、それは誇張か、少なくとも十数か所はツッコミどころがあるんですけれど、とりあえず言いたい。
なぜこの作品を収録した。
ほ、本当にこれでいいんですか? これで?;
もうちょっと、その……なかったんですか?
ヤングの作品は結構好きだったんですけれど、私の声が三オクターブぐらい下がりましたよ(「好きです♪」→「……好き……だったかもしれない……」)
人の好みはそれぞれあると思いますが、少なくとも私には、小学生時代に書いた物語を目の前に引っ張り出されるようなむずがゆさでした……
恥ずかしい! すごく恥ずかしい!
「時がまだ新しかったころ」とそう変わらないテーマなんですが、どうしてここまで劣化できたのか……
とにかく、この主人公、一回どこかに埋めといたほうがいいと思いませんか。
そして、ヤングの次に収録されているムアコック。
さすがムアコックですね! 文章が読みやすい!(ヤングで下がりすぎたせいで、評価が上がっている)
オチはやっぱりSFに典型的なあれですけれど。新人類になっちゃうぞ的な(私はこのオチ、少年誌の打ち切り「俺たちの戦いはこれからだ!」みたいに思えてあまり好きではないんですが)
続けて大御所による三作。これも安定して面白い。
選者が発掘してきたという、「緑のベルベットの外套を買った日」は、どうにもツッコミがしたくてうずうずうずうずしましたが、なんとかスルー。
最後の「努力」も濃密な話で面白いです。なんというか、読後に虚無感を覚えますが。一応、傑作と言われても問題はないと思います。
つまり、全体的に見れば、良かったんですが、しかし、一番最初があんまりだったせいで、他が格上げされている可能性も否めない。
しばらくの間、これは、ヤングが売れるのを阻止すべく仕組まれた陰謀か何か、という説を頭のなかでねじくり回していたんですが、どうも、今のところ、それほど批判的な評価を見かけないので、驚愕しているのは私だけかもしれません。
いや、本当に吃驚しました……
でも、そこも含めて存分に楽しめたと思います。というプラス評価。
たぶん、ヤング以外が悲惨だったら、すごいマイナス評価を付けていたと思いますが。
しかし、前述のとおり、この高評価は、ひょっとしてヤングの爆弾のせいではないかと……疑う気持ちも一抹あるんですよね……皮肉。
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